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東京地方裁判所 昭和31年(ヨ)4055号 決定

申請人 青木三郎 外一三名

被申請人 スバス・オーヴァーシーズ・カンパニーコーポレーション

主文

被申請人は申請人等に対しそれぞれ別紙目録記載の金員の支払をせよ。

申請費用は被申請人の負担とする。

(注、無保証)

(裁判官 西川美数 岩村弘雄 三好達)

(別紙)

債権目録

氏名

昭和三十年五月二十六日から

同年六月四日までの賃金

昭和三十年六月五日から

同年七月四日までの三十日分の賃金

合計

青木三郎

八、五四二円

二五、六二七円

三四、一六九円

藤井五郎

六、〇六一円

一八、一八三円

二四、二四四円

(以下省略)

【参考資料】

仮処分命令申請

債権者 青木三郎 外一三名

債務者 スバス・オーヴァー・シーズ・カンパニーコーポレーション

賃金並に予告手当支払請求仮処分事件

申請の趣旨

債務者は債権者等に対し、別紙債権目録合計欄記載の金員をそれぞれ支払うべし

申請の理由

一、債務者会社はパナマ共和国法に基く、商品の製造販売並に貿易等を目的とする株式会社であつて、本店をパナマ共和国パナマ市アバタド八五〇番地に有し、東京都千代田区丸の内二丁目一番地岸本ビル内に商法四七九条一項による営業所を有つている。昭和二八年一月四日、同法四七九条二項による登記手続を了した。右会社の「日本ニ於ケル代表者」はナフェー・マーセス・スバス氏(以下社長という)であつた。債権者等は何れも、債務者会社に雇傭されていた労働者である。

二、債務者会社はかねて営業不振で債務の処理に窮していたところ、昭和三十一年六月二日、前記社長が突然死亡したので、債務者会社の営業は事実上全く停止されてしまつた。

即ち、債務者会社の取締役は社長の他に(1)ジョセフ・エヌ・スバス氏(フランス人社長の長男)(2)ヘンリー・ジェー・ジンマーマン(アメリカ人)(3)カルロス・エー・イカザ氏(パナマ人)(4)ロバート・アール・アレマン(同)がいるのであるが、右(1)はスイスに、(3)(4)はパナマにおり、(2)は既に一年以上前に債務者会社に投資していた資本を回収して事実上、会社の経営とは何の関係ももたなくなつてしまつており、それに従来とも債務者会社は死亡したナフェー・マーセス・スバス氏個人の采配によつて運営されていたからである。

三、かくて債権者等従業員は突如企業閉止によつて放り出されてしまつたのであるが、マネージャーのエミール・シャルーブ氏はスイスにいる取締役ジョセフ・エヌ・スバス氏、イギリスにいる社長の三男アンドレ・エヌ・スバス氏等と電話連絡をした上、昭和三十一年六月四日午後三時頃、債権者等を集めて全員即日解雇する旨を伝えた。

四、債権者等は債務者会社を解雇されたものの債務者会社は同年五月二十六日以降、六月四日に至る十日間の賃金はおろか労働基準法所定の三十日分の解雇予告手当の提供もしない。債権者等の右十日分の賃金は別紙債権目録未払賃金欄記載の通りであり、予告手当は同目録予告手当欄記載の通りである。

五、ところで債権者は何れも債務者会社からの賃金を唯一の生活の源として来た労働者であつて、右債権の支払をうけなければ当面の生活に窮してしまつた実情にある。

よつて、請求の趣旨記載の仮処分を求める。

疎明方法(省略)

昭和三十一年六月 日

債権者代理人 上田誠吉 外一名

東京地方裁判所民事第十九部 御中

(別紙省略)

「申請の理由」等訂正申請

債権者 青木三郎 外十三名

債務者 スバス・オーヴァー・シーズ・カンパニーコーポレーション

右当事者間の御庁昭和三十一年(ヨ)第四〇五五号仮処分命令申請事件につき、「申請の理由」等を左の通り訂正する。

(一) 第三項中「債権者等を集めて、全員即日解雇する旨伝えた。」とあるを、

「債権者等を集めて、解雇予告手当の提供をしないで、全員即日解雇する旨を伝えた。」と、

(二) 第四項中「同年五月二十六日以降六月四日に至る十日間の賃金はおろか労働基準法所定の三十日分の解雇予告手当の提供もしない。

債権者等の右十日分の賃金は別紙債権目録未払賃金欄記載の通りであり、予告手当は同目録予告手当欄記載の通りである」とあるを、

「同年五月二十六日以降六月四日に至る十日間の賃金はおろか、三十日分の賃金の支払もしない。債権者等の右十日分の賃金は、別紙債権目録未払賃金欄記載の通りであり、右賃金は同目録三十日分の賃金欄記載の通りである」と、

(三) 債権目録中「解雇予告手当」とあるを、「三十日分の賃金」と、各訂正する。

昭和三十一年七月二日

右債権者代理人 上田誠吉 外一名

東京地方裁判所民事第十九部 御中

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